三浦ブログ

やばいぞやばいぞ

四天宝寺ホラーナイト3

財前と謙也の事件をもって、この怪奇事件はもはや市内の出来事

ではなく全国の出来事へと変わっていた。

四天宝寺中学校にはマスコミと野次馬が溢れかえり

その対応に追われる教職員の疲労といえば並大抵のものでは

なかった。

いつしか生徒たちの明るい声は消え、事件を面白おかしく

ほのめかすものも消えた。

完全に弱り切っていた。

千歳千里のいるクラスの隣のクラスでは

女生徒たちが集団ヒステリーを起こし

学級閉鎖も考えうる状況だった。

 

千歳は重いため息を吐き、空を見上げた

「どうしたもんかね」

 

四天宝寺テニス部は、校長室に呼ばれ事情聴取を

行われた。昨日、最後に財前と会ったものは誰だ。

何か変わったことはなかったか。など。

どうみても表向きの調査だった。

刑事たちも得られるものはないと前提にしている

みたいで、その態度が一氏の気に障り、キレかけたとこで

小春が窘めた。

結局収穫はなかったようで刑事たちはトボトボと

帰って行った。

 

その後、白石が緊急で部室にテニス部を収集した。

以前の様な楽しいテニス部は消え失せ、誰もが財前と

謙也のいるであろう場所に視線を移してはしかめっ面

をした。

完全に町の空気に飲まれていた。

無理もない。無理もない…そう言い聞かせ、

千歳はわざと明るい口調で話しだした。

「そんで、白石はなんの用たいね?」

千歳の明るい口調に少しながら緊張が解けた部員たちは

白石に視線を移した。

白石は変わらず眉間に皺を寄せていた。

「俺は、正直、謙也は死んだと思ってる」

その和やかなムードを大砲でぶち壊すかのような

白石の遠慮の一切が含まれない言葉に一氏がついに

キレた。

白石の胸ぐらに掴みかかり、周りの制止の声を無視し

後ろのロッカーに白石を思い切り叩きつけ

至近距離で怒鳴り声をあげた。

 

「白石ィ!!!」

「俺は正直に言ったまでや」

 

一氏の拳が白石の顔面にめり込んだあたりで

小春がやめてと叫んだ。

金ちゃんはというと唖然とした様子で立ちつくしていた。

銀や小石川が一氏やめろ、と白石から引きはがそうと

していた。一氏はもう周りが見えていないようで

荒い息で白石に殴りかかっていた。

白石はどこか諦めた表情で殴りかかる一氏を、

俺たちを見ていた。

めちゃくちゃだった。

 

千歳は気付くとまた窓の外の空を眺めていた。