三浦ブログ

やばいぞやばいぞ

四天宝寺ホラーナイト4

金ちゃんが、やめて、と小さく呟いたところで

一氏は我に返り、呆然とする周り、血まみれの白石を

視界にいれた。

一氏は横たわる白石からバッ、と飛び起き

狼狽した様子で後ずさっていった。

 

「一氏、」

肩に手を置くと、瞬時に払われた。

またしても一氏が驚いていた。

 

「あ、ごめ、いや、ちゃう、俺は、おれは、」

「一氏!!!」

 

一氏は乱雑にドアを開けると不安定に走り去って行った。

反動で強く閉まるドアの音だけが虚しく響いていた。

 

「ユウくん!」

「小春、ほっとけ!」

「でも、」

「あいつもパニくっとるんや。一人にさしたれ。

 頭の中を整頓する時間がいるはずやで」

小石川は軽く息を吐くと空気をしめなおすように

パンッ!と両の手を打った

「一氏には明日校庭百周でもやらせてやな…

 白石、部長であるお前も連帯責任や」

「そんな、小石川はんクラリン一方的にぶたれただけやで」

「発言も場所を考えろ、ちゅー話や。

 空気を読まんソイツが悪い」

小石川が視線を向けると白石が視線から逃れるように、

それでも小石川の眼を恨みがましく見つめながら身を捩った。

千歳は白石のイライラするような、それでいて忙しい様な

態度に疑問を抱いた。

それでも追求することはなく小石川の次の言葉を待った。

「振り出しに戻るけど、白石は一体何を話す気でいたんや」

皆の視線が白石に注がれる。

白石は視線をさげたあと、苛立ちをのみこむと

立ち上がり椅子に腰かけた。

「謙也については、俺一人の見解や。それだけで

 別に意味はない。本当に直感やから」

小春が聞きたくないとばかりに顔を背けた。

金ちゃんがそれを悲しそうに見るが、下世話なことはせず、

白石に話を促した。

「ただ、ほんまにこれは吸血鬼の仕業なんかな、と思って」

「どういうことだ?」

「立て続けにテニス部が襲われてる。これを、ただの

偶然やと思っていいのか…「クラリンやめて!!!」

小春が悲痛な声で叫んだ。もうその先が分かっているかのように。

だが白石が言わんとすることは小石川にも、おそらく千歳にも

わかっていることだった。

「俺らの知り合いが犯人やってか」

白石が目を細めた。

「根拠も動機も証拠もないけど、俺はそう疑ってる。」

「クラリン、お願いよ…!そんな悲しい事言わんといて」

「吸血鬼を犯人呼ばわりするよりは、よっぽど現実的なつもりや

それに…」

白石が部内を見渡す。部内は水が打ったかのように静かだった。

「俺は、ここの部長や」

 

「小春、一回落ち着き?」

驚くなかれここで口を割ったのは金太郎だった。

金太郎は心配そうにそして悲しそうに小春を見つめ

小春の背中をポン、と叩いた。

「金太郎はん、」

「白石もきっと、つらいんやで。でも白石は部長やから

 ワイらの安全のためにこう言ってんねんで」

小石川が一本取られたな、と薄く笑った。

ずっと難しい表情をしていた白石が、すこし緊張を解いた。

「小春、攻めるような言い方して悪かった」

「ええのよクラリン!ウチこそ、正気やなかったわ」

「とりあえず、疑わしきは罰せず、たい。

 人それぞれ思いは違うたい。ばってん、俺はみんなを信じとる。」

千歳の明るい声に皆少し穏やかな表情を見せた。

先ほどの鬱々とした雰囲気はもうここにはない。

四天宝寺テニス部はまた結束力を深めたようだった。

「よし!俺もお前らを信じる!けど、疑わしいことがあったら

 それはしゃぁないと思ってくれ。

 でも、俺はちゃんと理由を聞いてから判断する。

 疑わしいのは俺も一緒やしな」

「それは良い事ですな。」

銀の力強い頷きに久しぶりに白石が笑った。