三浦ブログ

やばいぞやばいぞ

四天宝寺ホラーナイト2

 

財前少年は駅のホームにいた。

すでに周囲は薄暗く、人もまばらになって来たころだ

駅のホームに軽快な音が鳴り響く。

 

≪そろそろ薄暗くなってきました。この頃不可思議な

 事件が連続して発生しております。

 くれぐれも少数の行動は控え、子供は五時帰宅を厳守とし、

 夜間の外出は危険ですのでご注意ください。

 くり返します≫

 

薄い唇をギッ、と噛みしめた。

何が不可思議な事件だ。何が吸血鬼だ。

そんなもので、謙也さんは。

 

財前はバッグを左手に持ち直し、薄暗いホームを後にした。

周囲の喧騒も、噂話も、なにも耳に入らなかった

なにもいれたくなかった。

 

少し歩くと、踏切に差し掛かった。

踏切が不意に遮るので少し舌打ちし、素直に待った。

 

ここ最近の財前は学校にいっているようで

行っていないようなものだった。

それは他の部活仲間も同じようなもので

誰もが浮足立っていた。

まさか、そんな、みんな思うけど、誰も口にしない。

言ってはいけない。 言っては、いけない。

認めたくない。

みんな疑心と戯言と詭弁を持って、恐怖とし

謙也の失踪から目を背けた。

ここではそれが正しかった。

そうでないと、掬いきれない。

そうでないと…

 

財前はもう一度瞼を開けた。

カンカンカンカン、と単調なリズムを奏で

電車が来ることを知らせた。

目の前を電車が走り抜けていく。

もの凄いスピードだった。気を抜けば引き込な

風圧の痛さに財前は眼を細めた。

 

電車が渡り切った

視界が開ける。

双方の棒が上がっていく。

下げていた視線を上げ、絶句した。

 

踏切の向こうに謙也がいた。

 

けんやさん、どこにいたんですか

財前の言葉は空気を響かせることなく、

喉にしまわれた。

ただただ流れる涙とただただ震える手足に

立つことが精いっぱいで何を言っていいのか

わからない。

 

ねぇ、謙也さん貴方言ったじゃないか

 

次の日線路の横に財前の死体が横たわっていた。

 

 

ねぇけんやさんあなたいったじゃないか